こんにちは、にゃんこ夫婦です。今回、ご紹介させていただくのは、コッツウォルズにあるナショナルトラストでシェル石油の御曹司が住んでいた美術館のようなマナーハウスのアプトン・ハウス・アンド・ガーデンズ(Upton House & Gardens)です。
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アプトンハウスは、1695年に建築されました。その館を、
シェル石油の創始者マーカス・サミュエルの息子のウォルター・サミュエルが1927年に購入しました。ウォルターは、絵画、タペストリー、磁器などのコレクターでその内容はまるで美術館です。実際、現在も絵画コレクションの中の作品が、パリのルーヴル美術館やロンドンのテイト美術館へ貸し出されているそうです。そして21年後の1948年に、そのコレクションが丸々収納されたこの館をナショナルトラストに寄贈しました。
館の全体のマップ
アプトンハウス の外観
これが駐車場の横のあるチケットオフィスです。

駐車場の横に可愛いチケットオフィスの小屋があって、ここで入場手続きをします。

チケットオフィスからアプトンハウスまで長い車寄せの道が続いています。

向こうに見えるのが門です。幹線道路沿いのわかりやすい場所にある館ですが、門からかなり奥に建物が建っているので中は静かです。

朝の光の中の写真で、館の方が暗めに写ってしまいましたが、館の大きさは判るでしょうか?真ん中に正面玄関があって東棟と西棟に建物が分かれています。

まず、建物の左側にある売店がある場所に向かいます。ここは、ステイブル・ヤードと言われる、元々馬小屋があった場所です。昔馬車が使われていた頃、出掛ける時にすぐ馬の用意をして正面玄関に馬車を横づけ出来るように、貴族の館ではステイブルは玄関の横などに作られています。この風見鶏が付いている建物がステイブルだった建物です。今は売店として使われています。
館に入る時間の予約 をします。
その売店の、斜め向かい側に小さな小屋があります。(下の写真中央。)そこが館に入る時間の予約をする場所になっています。そこにいるスタッフに見学者の人数を伝えて、パンフレットに入場時間を描いてもらって下さい。

パンフレットに書いてもらったこの時間にハウスの正面玄関に行き、中を見学します。普通ナショナルトラストは、入り口のチケットオフィスの所で、館に入場するチケットも貰う事が多いのですが、ここは館入場の予約の場所が別になっています。敷地内に入ったら、まずここに行ってください。早く予約が出来た人から、順番に館の中の見学が出来ます。係の人が入場の時間をパンフレットに記入してくれます。混んでいると見学時間まで2-3時間待ちになる事もあります。
見学時間と人数が書いた用紙を渡してくれます。
まだ館入場まで時間があったので、売店のある場所から建物の裏側に向かいお庭を先に見ることにしました。ステイブルの奥にある通路を通ってお庭に向かいます。
水仙がきれいに咲いていました。
この建物の横の通路は、昔使用人達が普段使っていた通路です。使用人達の住居や、キッチン、ご主人様の家族やお客様以外の人の出入り口など、いわゆる貴族の館のバックステージの部分です。

この通路にある建物のドアの1つに「バトラーのコッテージ」と書いたドアが!ここに執事が住んでいたのですね。
「バトラーのコッテージ」と書いた札
お庭の方はお日様ポカポカで暖かでした。のんびり芝生で、ピクニックをしている人も沢山います。お天気が良いと近所に住んでいる人達は、館に入らずに食べ物を持って来て、ピクニックシートをひいてお庭で子供と遊んで過ごしたりします。中世の貴族の館のお庭でピクニックなんて贅沢だなぁ、と思います。ナショナルトラストの施設は、地元の人たちの生活にも溶け込んでいるのです。
館の裏庭です
水仙がそろそろ終わりで、早咲のチューリップが咲いていました。

マナーハウスはだいたい正面玄関が北向きで、裏側の南向きにお庭が作ってある様です。やっぱりお庭が南向き、というのがベストですよね!
人工的に作った池がみえます。
大きなお庭です。緩やかな丘になっていて、人工的に作った池もありました。館の窓から池が見える様に作ってあるそうです。季節の花も沢山咲いていました。
イギリスの本物のマナーハウスの敷地内に宿泊 できます
綺麗な花や池の周りを散歩していると、庭の奥の方に素敵なコッテージがありました。
宿泊もできる コッテージ
この18世紀に建てられたコッテージは、宿泊施設になっています。ちょっと調べてみましたら、宿泊は最低2泊からと書かれていました。
一階は、キッチン、ダイニングルーム、リビングルーム、ユーティリティルーム(洗濯機と乾燥機が入っている所)があり、二階に寝室が2つとバスルームがあります。ダブルベッド1台の部屋と、シングルベッド2台の部屋で4人まで泊まれます。
もちろん、中は最新式の設備で、とても心地好さそうなイングリッシュ式のインテリアにしてありました。
この一件丸ごと貸し2泊で、£712(約103,700円)でした。でも基本的には、木曜日に入って木曜日の朝にチェックアウトする1週間滞在です。ちなみに、一週間で£1,295(約188,000円)でした。もちろんここに泊まっている人は、館の営業時間中はいつでも施設を使ったり、館にも入場出来ます。イギリスの本物のマナーハウスの敷地内に宿泊して一週間のんびりなんて、夢の休暇そのものですね。下のリンクでコッテージの中の写真を見る事が出来ます。

Bog Cottage Warwickshire
In the grounds of Upton House, overlooking the bog garden, this former banqueting house is a stylish retreat.
同じ敷地内に、このコッテージのほかにもう一軒5人用の3ベッドルームのファームハウスもあります。
ナショナルトラストは、このような宿泊施設も各地に沢山所有しています。今回のようなコッテージ一件貸しから、ちゃんとしたホテルまで色んな種類があります。会員だけでなく一般の人達も利用できます。こういう宿泊施設からの収入も、毎年巨額の資金がかかるマナーハウスのなどの施設の維持費の助けになっています。

この館の主の様な、ドッシリした樫の木の大木がありました。この館は300年以上昔に建てられましたが、その時からここにある木でしょうか?
巨大な樫の木
トトロが夜に来て、枝に座っても大丈夫そうです。(^◇^)

池の向こうの斜面にあるのは「
キッチンガーデン」です。南向きで日当たりの良い場所に作られていました。館で使うハーブや野菜などを植えておく、いわば家庭菜園です。マナーハウスにはどこにでもキッチンガーデンがあります。ナショナルトラストは、当時のままの状態で保存して、公開するようしてあるので、キッチンガーデンも毎年いろんな作物が作られていて、レストランやカフェでそれを使っています。
マナーハウス南側に広がるキッチンガーデン
ティールームでお茶の時間です
ハウス入場までまだ時間があったので、レストランでティーをする事にしました。館の横にあるパビリオン・レストランという名前です。
マナーハウスには必ずあるティールーム
この建物は2002年に建てられた、新しい物のようです。

売店やレストラン、カフェの現金収入もナショナルトラストの大事な運営費の資金源です。施設を訪れる人がまた来たくなるような魅力があります。天井のライトがお星様の形です。周りの壁の落ち着いた緑色は、館の周りの森林のイメージでしょうか?

お馴染みのイングリッシュケーキが並んでおり、ランチ用の暖かいメニューは、レジ後ろの黒板に書き出されています。だいたいランチメニューは午後2時半ぐらいまでで、あとはティーの時間ですので、ケーキやスコーン、マフィンなどと飲み物になります。ランチが終わった後も、サンドウィッチ、サラダなどの軽食はあります。

今日は、スコーンとティー、

くるみのケーキです。ケーキの上と間に塗ってあるのはバタークリームです。甘くて、懐かしい味です。

このりんごとエルダーフラワーのジュースはコッツウォルズのナショナルトラストの農場で作られたものです。エルダーフラワーは、砂糖水に漬けてジュースにしたり、西洋ハーブ薬としても昔から利用されてきました。甘いりんごに、いい香りのエルダーフラワーがとても良い相性でした。

このティーポットは、「ティー フォ ワン」という名前です。下にカップ&ソーサーも付いているので一人でティータイムという時に便利です。
特殊なティーポット
世界一濃い生クリームで有名なクロテッドクリームと、ナショナルトラストの農場で作られたイチゴジャムをタップリ付けて頂きます。こういう時は、カロリーやダイエットの事は考えてはいけません(笑)。

イギリスでスコーンの時のクロテッドクリームと言えば、このロッダです。1890年からロッダ家の台所で作られていたレシピを守って今も作られています。もちろんコーニッシュ製です。スコーンに塗る前に、ナイフで少し混ぜて柔らかくしてから塗ると、上手くスコーンの上に乗せることが出来ます。
マナーハウス内部見学です
時間になりました。早速ハウスに入ってみましょう。玄関のドアを入ってすぐのエントランスホールです。大理石で出来た大きなファイヤープレイス(暖炉)があります。鹿の頭の剥製が壁に飾られていて、貴族の館!という感じです。

入る時に「写真撮影は、フラッシュなしだったら大丈夫だから、沢山撮ってね!」とスタッフの方に許可をいただきました。この頃だいたいの施設でフラッシュなしなら写真撮影OK!になっています。 (事前に現場のスタッフに確認して下さい。)
客間の窓の横です。マントルピース(暖炉の周りの作られている枠組みと台の事)の上や横にある中国製の素晴らしい細工の家具の上など、あちこちにアンティークの時計や花瓶などが置かれています。

書斎。普通の人が思い描く「書斎」のイメージを形にしたお部屋だな、と思いました。

館のあちこちに沢山の絵画が飾られています。これは、書斎のベランダから見下ろしたピクチャールームです。家の中がそのまま美術館になったような造りです。

シェル石油の昔のポスターが、何枚も展示してあるお部屋もありました。
私が1番印象的だったのが、このお部屋です。
サミュエル夫人の為のベッドルーム「チャイニーズ・ベッドルーム」です。

カーペットは深いグリーンで、壁は薄いミントグリーン。家具類は茶色ベースの中国製のとても細工の細かいものでした。そして、ソファーやベッドのカバーなどは上品なローズピンク!です。この館の主達がここにいた20世紀初頭は、中国や日本のアジアテイストのインテリアや陶器などが、上流階級に凄く人気がありました。このお部屋は、その頃の流行最先端だったのでしょうね。鏡の横に掛けてある額は、浮世絵の美人絵でした。

窓の横に置いてあるこのディベッドというか、長椅子?良いですね!もし、これが私の部屋にあれば、周りにお気に入りの飲み物とスナック、本とiPadを用意して2~3日はここで過ごせます(笑)。

ヘアブラシ、服用のブラシ、手鏡などもグリーンで統一されています。

女の子だったら一度は夢の見るような、天蓋ベッドです。ピンク色の絹のサテン生地が天井の部分まで張られています。

ランプやベッドサイドテーブルも中国製の素敵な物です。

そしてピンク色の寝室の続き部屋にあるバスルームは、なんとアール・デコのバスルームでした。1925年にパリで開かれた装飾美術博覧会で、アメリカからの新しいデザインの流れ「アール・デコ」が紹介されてから、ヨーロッパでもアール・デコのデザインのインテリアや家具などが人気となっていました。当時の流行だった、チャイニーズ風とアール・デコの両方を使った贅沢なオンスィートの寝室ですね!

当時こういうメタリックなインテリア素材が無くて、このバスルームを作った職人さんは、随分工夫を重ねたそうです。
鏡やブラシ類まで、トータルコーディネートです。

とにかく今まで見たこともないような、凝りまくった!お金もかかった寝室でした。
小さいながらも本格的な美術館仕様のお部屋
凝ったベッドルームにビックリしながら一階に下りて行くと、天井に天窓がついて自然光が入るようになった、小さいながらも本格的な美術館仕様のお部屋がありました。ここに有名な宗教画家アル・グレコのコレクションが展示してあります。

その他、普段に使う事は出来ないけど、凄く綺麗な陶磁器のコレクションも、素敵なアンティークの棚に入れて沢山飾られていました。
アプトンハウスのドールハウス
二階部分までの大きな吹き抜けになっていて、先祖代々の自画像が掛けられているピクチャールームの真ん中に大きめのドールハウスがありました。これは、この館アプトンハウスのドールハウスです!

見て下さい!これはピンク色のベッドのあるチャイニーズベッドルームです。私が欲しかった長椅子や椅子、ドレッシングテーブルまで忠実に再現されています。下の階は、アル・グレコのコレクションルームです。壁紙まで一緒です。

このピクチャールームの横にはオークのパネルが素晴らしい暖炉のお部屋(ダイニングルームの横なので、多分食後にコーヒーやお酒を楽しむスペースだと思われます。)や、

ディナーの後、ジェントルマン達が色んな話をしながら、葉巻やブランデーを楽しみ、スヌーカー(ビリヤードの一種でイギリス特有のもの、台もビリヤードより大きめのです)の台もありました。こういう所で、政治や経済、経営の話がされて色んな歴史が作られて来たのだと思います。
見学コース最後の部屋は、ダイニングルームでした。

赤いカーペットですが、テーブルとチェアーは落ち着いた色で良いバランスです。ピカピカし過ぎていないので、落ち着いた雰囲気で食事が出来そうなお部屋です。

この食卓に、どんな人達が座ってディナーを食べたのでしょうか?
この壁際に置かれたテーブルは、執事達がディナーのサービスをする時に色んなものを置く台です。

ダイニングルームの外側、廊下を挟んで外側に、元々キッチンだった場所がありました。いまは、使われていませんが、以前はカフェとして使われていたようです。あまり大きな場所ではないので、手狭になって外側に新しいカフェの建物を建てたのでしょうね。
大きなオーブンや、食器棚など当時の面影が残っている素敵なお部屋でした。

明かりとりの天窓があって、昼間は電気がいらないぐらい明るかったです。きっとここで、毎日沢山のご馳走が作られていたのでしょうね。
最後に今回、館の中で私が好きだったものを集めてみました。
入り口の玄関ホールにある、大理石の大きなファイヤープレイスのマントルピースの上に飾ってあった中国製?日本製?のオリエンタルなお花模様が素敵な花瓶達。暖炉の周りにちょっと腰掛けられる?革張りの台がついてるのも面白いですね。

館のメインの階段とは別の階段ですが、オークの素敵な階段がありました。

この階段ホールの所に置かれていたグランド・ファーザーズ・クロック。コッツ、コッツと良い音で時を刻みながら動いていました。

世界中で大ヒットした、イギリス貴族の大河ドラマ「ダウントン・アビー」にも出てきた各部屋にある紐やボタンを押すと、使用人を呼ぶことが出来るシステム。この屋敷はダウントンアビーより近年なので、もう少し現代風でした。各部屋の名前が書いてあって、呼ばれた部屋の場所がわかるようになっています。数えてみたら、玄関2箇所のドアベルを除いて呼び鈴が付いている部屋は32部屋ありました。
最後に、、、
アップトンハウスは、20世紀に入ってからのイギリスの上流階級の生活の様子を覗ける施設です。出来れば花の咲く夏時間中に行って、のんびりお庭と館めぐりをしてみて下さい。
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